2つのファンドが同じ年に年12%のリターンを出したとします。一方は毎月+1%ずつ着実に上がり、もう一方は+50%と−30%を行き来して結局同じ12%に到達しました。運用能力は両ファンドが同等でしょうか?リスク調整リターン(Sharpe Ratio)は両ファンドを全く異なる評価をします — 同じ+12%が一方は1.5点、もう一方は0.5点になります。本稿はその評価の数学的原理と限界(Sortino / Calmarが代替となる理由)を整理します。
Sharpe Ratio (William Sharpe, 1966) は単純な比率で定義されます。
ここで:
分子は「リスクフリー資産を持っている以上にいくら稼いだか」 — すなわちリスクを背負った対価。分母は「そのリスクがどれほど大きかったか」。比率が大きいほど同じリスク単位あたりより多くの超過リターンを出した運用者。
仮想シナリオ。Rf = 3%、両ファンドとも年リターン12%。
| 指標 | 安定型 | 高ボラティリティ型 |
|---|---|---|
| 年リターン(Rp) | +12% | +12% |
| ボラティリティ(σ、年率) | 6% | 18% |
| Sharpe = (12 − 3) / σ | 1.5 | 0.5 |
同じリターン、3倍のスコア差。「安定型」は同じ9pp超過リターンを1/3のボラティリティで実現 — 厳密により良いリスク効率。
| Sharpe | 解釈 |
|---|---|
| < 0 | キャッシュを持っているより損 |
| 0.0 – 0.5 | 平凡 — 大半のアクティブファンド |
| 0.5 – 1.0 | 許容範囲 — S&P 500長期 ≈ 0.5 |
| 1.0 – 2.0 | 優秀 |
| > 2.0 | 例外的 / 検証対象 |
歴史的S&P 500 (1928–2023): Sharpe ~0.4–0.5。バークシャー・ハサウェイ(1976–2023): Sharpe ~0.76 — 数十年にわたりSharpe > 0.7を維持した運用が稀だからこそ伝説的。
Sharpeの最大の限界:すべてのボラティリティを悪として扱う。しかし上方ボラティリティ(突然の利益)と下方ボラティリティ(突然の損失)は同じではない。
例:+1%、+1%、+1%、+1%、+20%、+1%、+1%を出すファンドは高ボラティリティ(+20%のスパイク) — Sharpeはペナルティを受ける。しかしそのボラティリティはすべて上方だった。−10%、+1%、+1%、+1%、+1%、+1%、+20%と比較すると同じ平均、同じσだが、経路は全く異なる。
これがSortino Ratioの存在理由:分母に下方σのみ。そしてCalmar Ratio:リターンを最大ドローダウンで割る。
| 指標 | 分母 | 用途 |
|---|---|---|
| Sharpe | 全体σ | 一般的なベンチマーク |
| Sortino | 下方σのみ | 非対称リターンを狙う戦略 |
| Calmar | 最大ドローダウン | 資本保全戦略 |
1年Sharpeは統計的に弱い。学術的最低: 3–5年。マーケティング上素晴らしい1年Sharpeが翌年崩壊するケース。
異なるRf入力(3ヶ月T-bill vs 10年国債)はSharpeを0.1–0.3シフトさせる。ファンド比較時は同じRf仮定で揃える。
Sharpeはリターンがほぼ正規分布と仮定。ファットテール(オプション売り、レバレッジETF)を持つ戦略は静かな時期に高Sharpeを示すが爆発する — "蒸気ローラーの前でペニーを拾う"参照。
マーケティングSharpeはしばしば手数料控除前。控除後Sharpe(経費控除後)が投資家の実際に得るもの。